映画「戦場のメリークリスマス 4K修復版」(KBCシネマ1)

「戦場のメリークリスマス 4K修復版」が福岡のKBCシネマで最後のロードショー公開が行われると知ったのは、割と最近である。「戦場のメリークリスマス」は、中学生の頃に実家の近くにあった2番館で見て以来、強く印象に残っている作品である。アメリカの画質・音質に定評のあるビデオメーカー、CRITERION COLLECTIONからBlu-rayがリリースされた時には飛びつき、視聴したこともあった。1ヶ月半前にもAmazon Prime Videoで配信されているバージョンを視聴しているが、Amazon Prime Video配信の画質はお世辞にも良いとは言えなかった。フィルムの傷や埃、汚れがそのままビデオマスターになってしまっていたからである。CRITERION COLLCTIONの方は入念な汚れ落としを行い、適切なカラーコレクションを行っているので、現時点でBlu-rayで見られる最高峰の画質・音質ではないかと思う。

そんな状況の中、4K修復版ということでどこまでマスターフィルムを修復しているか気になったし、作品の内容的にも考えさせられるところが多いので、2022年12月にAmazon Prime Videoで「戦場のメリークリスマス」を鑑賞してわずか1ヶ月半後にKBCシネマでの4K修復版を鑑賞しに行くことになった。KBCシネマには先週も「ラストエンペラー 劇場公開版 4Kレストア」を見に行ったので2週続けて通うことになってしまったが、元々は「戦場のメリークリスマス 4K修復版」を見に行くのが最初の発端であり、それについて調べているうちに「ラストエンペラー」も上映されることを知ったので見に行った次第である。

「戦場のメリークリスマス 4K修復版」は、どうも聞いている限りでは劇場公開だけで、4K UHD Blu-ray化や4K UHDでのストリーミング配信はしないとのことである。ホームシアターで4K版が観られるのだったらKBCシネマに行くことはなかったかもしれないが、ホームシアター向けのビデオ制作はしないとの話なので、劇場に行くしかなかった。幸い、オンラインでチケットが余裕で買えたのと、土曜の午後のちょうど良い時間に上映されるので、タイミングも良く、映画館に鑑賞しに出かけられた。

映画館は半分ぐらいの埋まり具合だったが、改めて映画を見て、印象がまた違うことに気がついた。この映画、坂本龍一とかビートたけしが話題になるが、物語を進めていくのはタイトルロールのロレンスなんだよな、と再確認。ロレンスのイギリス人としての考え方と、日本語が喋れるがために日本人に対する理解も他の捕虜に比べれば高いというところで、ロレンスとハラ軍曹の理解できない民族思想とそれを理解しようとする態度が、物語の根幹をなしているのだな、と改めて実感した。

ただ、ヨノイ大尉とイギリス人将校セリアズとの同性愛的関係も当然作品の中核にあるわけで、セリアズが過去の自分の弟にした行為についての後悔と、その贖罪としてのヨノイ大尉へのキスが、セリアズを気にするヨノイ大尉の心境の変化を促す触媒になっていると思う。

中学生の時に見てもよくわからなかったし、CRITERION版のBlu-rayを観ても表面的にしか理解できなかったこの「戦場のメリークリスマス」は、今回の4K修復版鑑賞により、深いテーマを持った作品として、心に残る作品になったと言える。最後のロードショー公開に間に合って良かったというのが実感である。

肝心の画質・音質だが、圧倒的に見違えるような映像・音響になっている。Amazon Prime Videoで気になったフィルムのゴミや傷、埃等が完全に取り除かれ、4Kならではの高精細な映像がスクリーンを圧倒する。フィルムの状態からすると、CRITERION版のレストアと同等の出来の良さではないかと思う。もちろん解像度は違うのだが。色彩も4K修復版は画面が暗いが暗部もよく見えていて、CRITERION版で画面を明るくして暗部を明確にしていた処理より自然に感じられた。CRITERION版は画面を明るくしたためにフィルムのグレインノイズも見えていたが、4K修復版はグレインノイズを抑え込んでいたので、クリアである。音もキャラクターのセリフが聞き取りやすくなっているので、物語の深いところでの理解がしやすい。サラウンドは坂本龍一のBGMだけがサラウンドに回り込むところは変わりないが、BGMの音の広がりが効果的に使われていて、良かったと思う。

「戦場のメリークリスマス 4K修復版ポスター」

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