スター・トレック:ストレンジ・ニュー・ワールド シーズン2第8話「戦争の名のもとに」(Paramount+/WOWOWオンデマンド)

あらすじ

エンタープライズはある大使を受け入れ、宇宙基地に輸送することになった。その大使は数年前に戦争を行なっていた宿敵のクリンゴン人、ラーだった。ラー大使は連邦との戦争時に虐殺者と呼ばれていて忌み嫌われていた。

エンタープライズのクルーの中にもラー大使に対して嫌悪感を示す者が少なくなかった。オルテガスもその一人だったが、ラー大使の姿を見てショックを受けたのがドクターのムベンガとチャペルだった。

数年前のクリゴンとの戦争時、チャペルは前線基地のあるジガールに派遣された。そこは戦争の激戦地であり、多くの連邦の兵士が戦いに傷ついて医療部の助けを必要としていた。チャペルも着任早々医療部長に任命され、傷ついた人々を救おうと必死になる。内臓を修復する装置がないために、内臓を負傷した兵士を転送装置のバッファーに入れて助けようとすらしていた。

ムベンガもそこで医療に取り組んでいたが、犠牲者が多く、苦慮していた。アンドリア人はムベンガにラー将軍を殺せる毒薬の提供を求めるが、ムベンガは医師としてそれを拒絶する。

エンタープライズの艦内ではラー大使の歓迎会を開いていた。オルテガスもムベンガもチャペルも内心の怒りを抑えて歓迎会に出席するが、己の感情を抑えきれず、退席する。しかし、ラー大使はムベンガに対してクリンゴン柔道の相手をしてもらうよう依頼する。

ムベンガはラー大使とクリンゴン柔道で手合わせするが、お互いの溝は埋まらなかった。戦争の犠牲を強く見てきたムベンガに取ってみれば、ラー大使がいくら改心したと言っても素直に信じられなかったのである。そして、ラー大使がジガールの虐殺者と呼ばれた理由を語りだすのだった。

戦争時、ラー大使はジガールで「クリンゴン以外は皆殺しにしろ」と命令し、ジガールの一般市民をも巻き添えにしていた。ラー大使は部下が本当に一般市民を巻き添えにしたことを知り、部下を抹殺したと告白し、それがジガールの虐殺者と呼ばれる要因になっているとムベンガに話した。

一方、戦争時、ラー将軍を抹殺すべく、連邦兵士たちは捨て身の攻撃に出る。しかし、それが失敗し、仲間を救うためには転送装置が必要になり、負傷した兵士を救うために使っていた転送装置のバッファーを切らざるを得なくなる。

エンタープライズ艦内でラー大使はムベンガにお詫びをしに来るのだが、そこでジガールの虐殺者の真相がムベンガから語られる。そして悲劇が起こった。

感想

「スター・トレック:ストレンジ・ニュー・ワールド」ではあまり活躍の場を持たないクリンゴンとの悲劇を描いたかなり重たい話である。「スター・トレック:ディスカバリー」シーズン1ではグリンゴンと連邦の全面戦争が描かれていたが、ムベンガとチャペルが実は前線基地のジガールで医療に従事していて、ラー将軍の無慈悲な指揮のもと攻撃を仕掛けるクリンゴンと、連邦の戦いをかなり悲劇的に描いている。

「新スター・トレック:ザ・ネクスト・ジェネレーション」以降では連邦の味方になっているクリンゴンではあるが、「ストレンジ・ニュー・ワールド」ではまだ敵対種族である。そのため、緊迫感が強いし、ムベンガとチャペルが前線でどういう体験をしたかが詳細に描かれ、戦争の悲惨さ、愚かさがよく出たエピソードになっている。

それだけにとどまらず、戦争の加害者に対する被害者の恨みつらみをどう晴らすのか、というかなり根源的な問いをこのエピソードでムベンガを通じて描いていて、一筋縄ではいかない内容になっている。ラストでパイク船長とムベンガの対話は、過去を許すのか許さないのか、という理解し合えない対立になっていて、すっきりしないまま終わってしまう。

現在の世情に対する問いかけのようなこのエピソードは、スター・トレックならではのエピソードだと思うが、視聴者に対してあまりに重いテーマを投げかけている。視聴者も答えを出せないのではないかと思う。

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