仲村清司著「消えゆく沖縄 移住生活20年の光と影」光文社新書

大阪出身のウチナーンチュ2世である仲村清司氏が、沖縄に移住して20年を経て、その間に感じ取った沖縄らしさの消失を、新書という形式でまとめたのが、この「消えゆく沖縄 移住生活20年の光と影」である。仲村清司氏の著書といえば、僕が沖縄に断続的に恋い焦がれている間に、沖縄の食文化や、風習等を面白おかしく紹介し、沖縄の生活スタイルに憧れるように仕向けていく、そういう内容が多かったように思う。しかし、その沖縄の文化を紹介する本を上梓してから10数年が過ぎ、観光客も増え、沖縄が観光立県になっていくと同時に、何かが失われていっていることに危惧した仲村清司氏が、自分の遺書的な内容で述べているのが、今作の特徴である。僕個人との関わりで言えば、沖縄に恋い焦がれていた10数年前に、一人でバックパッカー的旅をし、沖縄を満喫していたように思う。しかし、その後、様々な事情から沖縄からは離れていた。仲村清司氏の著書や、下川裕治氏の著書でその間も沖縄に憧れは持っていたが、本格的に沖縄に向き合い出したのは今年である。今年、3度も沖縄と離島を巡り、例えば那覇の国際通りでドン・キホーテが出店しているのに驚いたり、モノレールのゆいレールの時間の正確さに当たり前のように感じたのは、まさに沖縄自体が本土化していることの表れのような気がしてならない。逆に南の果てである波照間島などは、まだ、本土化がされていないところではあるが、これも飛行機による空路の開設により、本土化が進む危惧を感じる。そうした今年の旅行を踏まえ、この「消えゆく沖縄」を読むと、沖縄のアイデンティティが消失しつつあるのが、実感を伴って理解できるようになる。もちろん観光のみならず、基地問題や、神の消失といった、日本のマスコミが伝えない、というか伝えられない内容にも踏み込んでいて、その辺はナイチャーである僕にとっても、考えさせられるところがある。第3章では、仲村清司氏が色々助けてもらっていたバーのマスターとの交流について触れられているが、このマスターの存在も、沖縄らしさの消失を物語っていると言える。仲村清司氏が、余生を沖縄で過ごすのか、それもあやふやになってきたと語るように、沖縄自体の変容が、大きな要因であると言える。この本は、結構個人的内容が深いと思うが、それでいて、沖縄に関心を寄せる万人にも、何か訴えかける力を持っていると思う。日本本土においても、この問題は無視はできないと感じている。近年、シリアスな内容の本を上梓していることもある仲村清司氏であるが、読みやすいながら、何か読者に問題を突きつけているところは、読後、心に引っかかりを残していると思う。光文社新書創刊15周年記念の本ではあるが、沖縄フリークであってもなくても、一度は読んでいただきたいと思わせる本である。

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