1955年に出版されたウラジーミル・ナボコフの大問題作が、この「ロリータ」である。1962年にスタンリー・キューブリックが、1997年にエイドリアン・ラインが監督して映画化されたことでも知られている。
「ロリータ・コンプレックス」=「ロリコン」の語源となった作品である。作品は、フランス人の中年男性、ハンバート・ハンバートの手記を読ませる形になっている。手記を預かっていた人物が、ハンバート・ハンバートと彼の義理の娘ロリータの両名がこの世を去ったので、ハンバート・ハンバートの手記を世の中に公開した、という設定で物語は進んでいく。
映画版よりも物語の内容が細かいのが特徴で、550ページ以上にわたる大長編小説である。物語は第一部と第二部に分かれていて、第一部はハンバート・ハンバートがアメリカの下宿に厄介になり、下宿の娘であるロリータに恋をして、彼女を物にすべくロリータの母であり未亡人であるシャーロットと結婚をするのだが、ハンバートの心のうちを明かした日記を読んだことでショックを受け、事故死してしまい、ハンバートはロリータを物にしてしまうという展開である。
第一部について言えば、間違いなく未成年の少女に欲情する中年男性の在り方を描いたアンモラルなストーリーであると言える。ただ、少女であるロリータも実はハンバート・ハンバートを受け入れる前にキャンプで同世代の男の子と事をなしているので、ハンバート・ハンバートを受け入れるというのが不同意ではないところが肝になっている。
ハンバート・ハンバートが少女に欲情するようになった経緯も描かれていて、少年時代に恋をした少女のことが心に残っていて、それが影響しているというのも、説得力はある。
第一部がロリータと結ばれるハンバート・ハンバートの姿を描いたものだとすると、第二部は一転して二人がアメリカ中を旅するロード・ノヴェルの様相を呈してくる。そして、ロリータを愛するがために束縛しようとするハンバート・ハンバートに対して、ロリータが次第にハンバートを嫌うようになっていくのが、物語の展開として興味深い。第二部を読んでいると、ロリータの人生をハンバート・ハンバートが壊してしまった、という読み方ができ、そのロリータの壊れた人生をロリータや周りの人々がどう修復していくか、というストーリーになっている。
そして、ロリータがハンバート・ハンバートの元を去ってからの展開は、ハンバート・ハンバートにとっては悪夢のような人生になっている。それが最終的にはロリータが逃げ出すための手引きをしたクィルティという男への復讐心となっているところが、ラストとして相応しい。
小説自体がしばしばフランス語の会話になっている箇所があり、ハンバート・ハンバートの知性の高さを示しているが、本の最後に書かれた注釈を読んでみると、実はさらに奥深い要素が隠されていることを知り、愕然とする。単なる少女愛を描いた作品ではなく、もっと深い読み方ができそうな作品である。
キューブリック版「ロリータ」を見た後に原作小説を読んだのだが、とにかく長い小説だとは思ったが、世界観にハマりだすと異常に面白く、傑作であると確信している。ナボコフの力量が発揮された作品として、おすすめしたい作品である。
