三上智恵著「戦雲 要塞化する沖縄、島々の記録」集英社新書

先週、ドキュメンタリー映画である「戦雲(いくさふむ)」をKBCシネマで見ることができた。劇場で見られるかどうかがわからなかった3月下旬に、同名タイトルである書籍版の「戦雲 要塞化する沖縄、島々の記録」を手に入れて、先に書籍版を読み出し、途中で映画版を見てから、また、書籍版に戻る、という具合に2つのバージョンがある「戦雲」を行き来していた。

映画版「戦雲(いくさふむ)」は、与那国島や石垣島、宮古島をメインに、自衛隊の軍事要塞化が進む姿と、与那国島でそれでも自衛隊の末端隊員と交流を続ける島の人の姿を追った話になっているが、書籍版「戦雲」は、それに加えて沖縄本島の辺野古基地建設に反対する人々の姿を克明に追っているのと、映画版で挿入されている自衛隊末端の隊員との交流部分はカットされているのが特徴である。結果として、著者である三上智恵さんの憤りがメインに出た内容になっている。

書籍版の特徴はというと、実は各章ごとに章タイトルの下にQRコードが印刷されていて、スマートフォンのカメラでQRコードを読み込むとYouTubeの該当動画に飛ぶ仕組みになっていて、該当動画を見ないと、本文の説明がわかりづらい、という仕掛けになっている。三上智恵さんが取材した米軍、自衛隊基地反対の迫真迫る動画を見た後で、本文の説明を読むと理解できる仕掛けなので、書籍の分量としては多くはないのだが、動画を見る時間がプラスアルファされるので、結構費やす時間は多い。動画は平均して15分-20分程度であり、中には30分を越すものもある。

書籍版はまさに今の国の沖縄に対する姿勢を批判すべき内容になっているので、テーマとしては重たいし、映画版「戦雲(いくさふむ)」よりも引っかかる部分は大きい。動画を見て、本文を読んで、自分が何ができるのだろうか、自分はこれまで沖縄に何回も旅行に行って何を見てきたのだろうか、と自問する機会が多かったと思う。

そして、この書籍の内容は沖縄の問題だけにとどまらないのが怖いところである。今もニュースで全国の空港、港が自衛隊が優先的に利用できるようになる「特定利用空港・港湾」の指定が発表されたこともあり、まさに戦争を始めようとしているのではないか、この書籍で訴えかけていることに呼応してアクションを起こすには遅すぎたのでは、と怖い気持ちが湧いてきている。

中国脅威論がまやかしであるという話の方に僕は傾いているし、そもそも脅威を感じる前に対話を続けるということを放棄している国の姿勢に疑問を感じさせられざるを得ない。それは、この書籍版の動画を見たり本文を読めば理解できると思うが、そもそもそういう関心を持たない人や思考停止している人は、理解もしないだろうとは思う。

映画版を見た時にも「できることはやっていきたい」と思ったが、書籍版を読んで、その思いは強くした。

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