フランク・ミラー「バットマン:ダークナイト・リターンズ」小学館プロダクション

バットマンが自警団を辞めて早10年。ゴッサム・シティは荒廃していた。ブルース・ウェインは、バットマンでの悪への復讐の念を自動車レース等で紛らわせていたが、その心を抑えきれず、初老の域に達しているにもかかわらず、バットマンとして復活をする。おりしも街はミュータント団と名乗る犯罪組織が暴れまわっていた。バットマンはその退治に挑むが、バットマンの復活の報を聞き、トゥーフェイスやジョーカーといったかつての宿敵も復活を遂げてしまう。そして市民の間にもバットマンの自警団的活動を疑問視する声が多かった。その声はアメリカ合衆国大統領にも届き、ついに政府の犬と化して何とか生き抜いていたスーパーマンをバットマン退治に差し向ける事となる。かくしてバットマンの最後の敵はスーパーマンという鋼鉄の男との戦いになっていくのだった。

1986年に発表されたバットマンのコミックスの一つで、これまでのヒーロー概念を変えてしまった問題作。このコミックスを元にしてティム・バートン版「バットマン」や、クリストファー・ノーラン版「ダークナイト」シリーズが誕生する事となっている。その両方に共通するのはバットマンという今まで無条件にヒーローとして扱われていたキャラが本当にヒーローなのか、法のルールを破って悪と戦うヒーローは本当に正義の味方なのか、という事だろう。その現実の世界で考えれば当たり前の条件をコミックスの中で描いてしまったのだから、リアリティという面で格段の進歩がある。映画もそのテーマに沿って描かれるので、作品自体にリアリティを持たせることに成功している。作品の書き方なのか、翻訳が悪いのか、少々読みづらい面はあるし、日本になじみの無いDCコミックスの世界観の中での話なので、分かりづらい面もあるが、読んでいて面白いと思わせる何かはある。このコミックスを購入したのはもう10数年前だが、改めて今回読んでみて、理解度が深まった感はある。

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